マスメディアを無視しtwitterに向かうランス・アームストロング

自転車ロードレースに興味がある方ならばご承知の通り、ランス・アームストロングがロードレース界に復帰した。

かつて癌を克服しツール・ド・フランス7連覇(1999〜2005)という偉業を達成したこのアメリカ人は、2005年に一旦現役を引退したが、昨年の秋頃に現役復帰を表明。現在、世界3大レースであるジロ・デ・イタリアに出場している。普段ロードレース関連のニュースがまったくといって報じられない日本でも、彼の名前をまったく無視することは不可能のようで、それでもまぁ申し訳程度なのだが、このことについては新聞社のサイトでも記事がちらほらと出ていたようだ。

さて、殆ど生き残れる確率のない癌に打ち勝ち世界最大のレースで7連勝。生きる伝説といって差し支えないような経歴を持つ彼だが、現役時代には多分に悩まされたことがあった。マスメディアへの対応だ。
アメリカ人にとってはまさにヒーロー的な存在のランスだが、一部のフランス人をはじめヨーロッパ人にとって、自分達のお祭りとも言えるツールで毎年勝ち続ける無敵のアメリカ人は好ましくない存在として見られてたようだ。そしてそうした感情を持ったジャーナリスト達が存在することは、想像に難くない。
著書「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」でも、現役時代、彼は(彼が言うにはだが)ありもしないドーピングスキャンダルをメディアが騒ぎ立てたせいで、たびたび問題に巻き込まれそうになったと言っている。ドーピング騒動についての真偽については知る術を持たないので何とも言えないが、それはさておき、ジャーナリスト達が取材対象者の発言を自分の都合のよいように部分的に取り出したり、演出で多少誇張・歪曲したりしようと傾向は、おそらくどこの国も変わりがないのだろう。こうしたジャーナリスト達に足元をすくわれないようにするためには、自身の発言には相当余計な気を使ったことだろうと思う。

さて、現在現役復帰を果たし、イタリアで連日のレースに臨んでいるランス。現在でもやはり彼に対し友好的でないジャーナリスト達に対抗するために、彼は古いやり方を撤廃した。自分を取り巻く世論を形づくる権利の一端をジャーナリスト達から取り戻すべく、twitter上で自身の公式見解を発表するようにしたのだ。かつては記者たちのフィルターを通じ一般市民に(余計に?)味付けされ届けられていたランスの言葉やその真意は、今では彼自身の書き込みにより90万人以上(! 09年5月25日現在)のフォロワーに直接届けられている。これは、ジャーナリスト達がかつてのように都合よく彼の発言を捻じ曲げたりすることに対する抑止効果となるだろうと考えられる。

アームストロングのtwitterアカウント
https://twitter.com/lancearmstrong

CYCLINGTIME.comランス・アームストロングとメディアの関係」
http://www.cyclingtime.com/modules/ctnews/view.php?p=10848

私は彼のアカウントをフォローしているが、なかなか面白い。今日のレースの感想は勿論、誰と会って何を食べたかとか、個人的なつぶやきがばらばらと流れてくる。今彼が所属しているチーム(チームアスタナ。財政状況により選手への給与未払いが問題化)の状況とあわせてみていると意味深とも取れるようなつぶやきも中にはある。

ちなみにアームストロングはTIMEのTop 10 Celebrity Twitter Feedsの6位にランクインしている。
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1878865_1878867_1878872,00.html

上記TOP10にランクインしている他のセレブ達が自分のつぶやきを自分で入力しているのか、はたまたゴーストライターを立てているのかはわからないが、私が見る限りランスは愛用のBlackberryを使い、自分自身でつぶやきを入力しているようだ。ちなみに今日も彼は「誰かBlackberryに最適なtwitter appsを知らないか」なんてつぶやいていたし、もはやtwitterは彼にとってただの公式発言用プラットフォームではなく、中毒の対象になってしまっているのかも。。

追記)上記CYCLINGTIMEから引用した記事ではランスはインタビューを「ボイコットした」と書かれているが、この記事のことがランスの耳に入ったのだろう、ランスは先ほど↓こんなエントリ↓をアップした。何とも微笑ましい。彼のユーモアセンスが滲み出ている。
http://twitpic.com/5vfiu